わたしがまだ18歳の頃です。
当時、10年ほど飼っていたウサギが突然亡くなってしまい
心に深い傷を負っていました。
心の傷を癒すためか…その頃はよくペットショップに通っていました。
そこで猫と触れ合う機会があり、猫の可愛さを知り
「猫を飼いたい」と思うようになりました。

「どうせなら、捨てられて保護されている猫ちゃんをもらってあげよう。」

そう思い立ち、
大阪で捨て猫を保護している里親さんを探し、連絡を取ってみました。
その里親さんは、家の近くで捨てられていた15匹ほどの猫たちを、
一時保護しているようでした。

一週間後、里親さん宅に伺うと、 部屋の中には14匹の猫たちが元気に走り回っていました。
その猫たちは、捨て猫とは思えないほど人懐っこくて、
里親さんからたくさん愛情を 注いでもらっているのがよくわかりました。

そんな事を思っていると、里親さんが一言

「ほんとはもう一匹いてるんやけど…
かなり怖がりな猫ちゃんだから、どこかに隠れてるみたい。」

里親さんは、わたしにその猫を見せようと
部屋の中をキョロキョロ探し回ります。

すると、部屋の隅に置いているソファーの裏から、
少しだけ顔を出して(もはや家政婦は見た状態)
こちらを見つめる不安そうなお目目が…
それが、「はなちゃん」との出会いだったのです。

「はなちゃん~!そんな所にいてたんか~!こっちおいで?」

里親さんが、そっとはなちゃんを抱き寄せて、
自分の膝に乗せようとするのですが
知らない人が居るからなのか、
すぐに逃げ出してソファーの裏に隠れてしまいます。

「あの子は、人間が怖いねん。
ほら、あのしっぽ見て。変わった形してるやろ?」

はなちゃんのしっぽはいわゆる“カギしっぽ”でした。

里親さん曰く、カギしっぽは生まれつきや、
事故が原因で起こることも多いそうなのですが
はなちゃんほどの怖がりさんは珍しく、
野良猫の時代に「人に嫌なことをされた」のではないか…との話でした。

「私にも慣れるまですごく時間かかったんやけどね、
でも本当はきっと甘えん坊で可愛い子やで。」

里親さんと話をしている最中も、
はなちゃんはソファーから顔を出したり、引っ込めたり…

気になるけど、怖いんだニャ。
そう言っているみたいで、 それがすごく可愛く見えたのを覚えています。

里親さんは、ほかの猫たちも一匹一匹丁寧に紹介してくれました。
ぽっちゃり黒猫のクロちゃん。
人懐っこい玉ちゃん(名前が平凡すぎることはノーコメント)
みんな初対面の私でも、お構いなく近寄ってきて頬をスリスリ。
とっても可愛い子たちです。

でもわたしはその最中も、
ずっとはなちゃんの様子を伺っていました。

「里親さん、わたし、はなちゃんを連れて帰りたいです。」
気が付くとわたしは、里親さんにそう言っていました。